二次構造の研究方法

○円二色性(Circular dichroism, CD)スペクトル

右円偏光と左円偏光の吸収の差を測定する方法。
キラリティ(旋光性)をもつ分子の測定においてよく用いられる。

タンパク質の場合、アミノ酸の旋光性よりもむしろ二次構造のペプチド鎖に由来する旋光性の観測に用いられる。

実験条件も含め測定が容易であるため、
熱や溶媒などによるタンパク質の変性状態を調べるのに有効な手段である。

これは典型的な二次構造のCDスペクトルの例である。
(Poly-L-Lysine、Townend et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 23, p.163 (1966) )
(蛋白質の旋光性 濱口浩三 著, 模写)

二次構造 CDスペクトルの特徴
αへリックス
・196nm付近に大きな正の、207と222nm付近に二つの負の極大を持つ。

βシート
・197nm付近と216nm付近にそれぞれ正と負の極大を持つ。

ランダムコイル
・は196nm付近に大きな負の極大を持つ。

 (注:構成されるアミノ酸の種類や溶媒によって若干の違いはあります。)

実際の測定例(リゾチーム)

(試料タンパク質 リゾチーム, pH6)

・208nm付近の負の極小や
・222nm付近の肩
・共に大きな負のCD値を示す

⇒αヘリックスやβの存在を反映
(天然状態)

(試料タンパク質 リゾチーム, pH2)

変性剤(塩酸グアニジン, GdnHCl)を用いて
リゾチームを変性させた時のCDスペクトルの変化

(210nm以下は散乱が激しく観測不能)


[GdnHCl]=0Mのとき
大きな負のCD値
天然状態


[GdnHCl]の増加により・・・
220nm付近のCD値がゼロに近づく
ランダムコイル化を反映
変性状態

例えば222nmを塩酸グアニジン濃度に対してプロットすると、
図のようにある濃度からCD値が変化していく(リゾチームが変性していく)のがわかる。
この変化率から変性における自由エネルギー変化を算出できる(後述)。