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森澤研(分光物性化学研究室)上野那美博士、竹腰真聡学士、Anna Zaitceva氏(Lomonosov Moscow State University交換留学生)、関西学院大学 尾崎幸洋名誉教授の研究がJournal of Chemical Physics (Impact Fac

2022.02.21

  • 研究

森澤研(分光物性化学研究室)上野那美博士(2020年度 修了)、竹腰真聡(2019年 卒業)および 大学の世界展開力強化事業にてLomonosov Moscow State Universityから交換留学(2019年9月~12月)Anna Zaitcevaと関西学院大学尾崎名誉教授と共同で、「減衰全反射遠紫外分光法によるハイドレートメルト中の水の電子励起エネルギー増加の実証」がアメリカ物理学協会( American Institute of Physics (AIP) )が発行している雑誌Journal of Chemical Physics (Impact Factor 3.48)へ掲載されました。

これは科研費基盤(C)「水系電解質の電位窓拡張機構実証のための高濃度塩水溶液中の水の電子状態研究」の研究の一環として行った研究です。

ハイドレートメルトは日本で開発された、水を溶媒にしたリチウムイオン電導性液体です。水は不燃性で毒性もない安全な物質でありながら、安価で入手可能な資源です。リチウム電池の稼働電圧(約3V)において、通常の水性電解質では水の電気分解がおこり利用ができませんでした。しかし、ハイドレートメルトではこの電気分解が起こりません。その理由の一つに、ハイドレートメルト中での水の電子励起エネルギー上昇が関与しているという理論研究がなされていましたが、実験的な実証はされていませんでした。今回、森澤研が独自に開発している減衰全反射遠紫外分光法を用いて、従来では観測が難しい液体の遠紫外電子励起スペクトルを測定し、ハイドレートメルト中で水の電子励起エネルギーが普通の水に比べて大きく上昇していることを実証しました。

博士後期課程学生が最先端技術に興味を持ったことから始まった研究が、4回生・留学生と刺激しあい、様々な水溶液の精密な測定を通して実証にいたりました。

化学コースでは引き続き、SDGsに貢献する安全なイオン電導性溶液開発の研究に取り組みます。

Nami Ueno, Masato Takegoshi, Anna Zaitceva, Yukihiro Ozaki, and Yusuke Morisawa, J. Chem. Phys. 156, 074705 (2022); https://doi.org/10.1063/5.0071893