研究分野

黒田 孝義 教授(錯体化学研究室)

分子ひとつの磁石を究めるナノテクノロジー。

分子レベルの磁石、つまり分子性磁石体が、私の研究テーマです。分子性磁石体の中でも、一つで磁石の振る舞いをする単一分子磁石は、次世代のすぐれた分子メモリとして期待されています。私たちは金属イオンに化合物を結合させ、その構造と機能を研究することで、新たな分子磁石やスピンクロスオーバー錯体を開発しています。スピンクロスオーバー錯体とは、温度が変わるとそれ自体が持つ磁性も変化するもので、将来的にはスイッチングやメモリ、量子コンピュータへの応用が考えられます。

山口 仁宏 教授(機能性有機分子化学研究室)

たくさんの可能性を秘めた、有機ELの実用化を目指す。

私の研究は、有機EL素子の材料となる有機発光体の合成です。有機ELとは、電気を通すことで光る有機化合物のこと。液晶に替わるディスプレー材料として期待されています。有機ELの魅力はディスプレーを薄型化できる点、自ら光るので画面が非常に美しい点、応答性が良いので動画表示に圧倒的に有利な点です。弱い電力でも光るので、省エネにもつながります。現在のところ素子の寿命がまだ短いので、本格的な実用化にはあと数年程かかりますが、それらの問題点を克服するための基礎的研究を進めています。

中口 譲 教授(地球化学研究室)

GEOTRACES研究プロジェクトで海洋の状態を探る!

さまざまな生物が生息し、二酸化炭素を吸収する場として、海は大きな役割を果たしています。海洋に吸収された二酸化炭素は無機物としてだけでなく、一部は植物プランクトンの光合成によって有機物へ変換され、深海へと運ばれます。私の研究室では、植物プランクトンの成長・繁殖に影響する海中の化学成分の量や形態を調べ、今後の海洋の様子や地球気候を予測しています。近年、GEOTRACESという国際研究プロジェクトが計画され、私の研究室も参加する予定です。全世界の研究者がデータを提供し合い、地球というシステムの中で海洋がいかに働いているか、解明を目指します。

若林 知成 教授(構造物理化学研究室)

身近な元素である炭素から未来のコンピュータを生み出す。

複数の原子がまっすぐ連なる直線分子ができるのは、炭素ならではの特徴。直線分子は宇宙電波観測で初めて見つかりました。私たちの研究室では炭素原子が8個から16個つながった直線分子を合成し、どの波長の光を吸収し、どの波長の光を放出するかという基本性質を調べています。この研究は、分子中の電子や原子核の運動制御につながることから、電子や原子核の波動性や重ね合わせ状態を利用する、未来の計算機への応用の可能性を秘めています。私たちは新しい分子の状態制御を未来のコンピュータに活用することを目指しています。

神山 匡 教授(物理化学研究室)

たんぱく質が働く仕組みを理解し、コントロールする。

たんぱく質の構造は温度や圧力、溶媒によって変化し、機能も変わります。例えば人間の体内にあるヘモグロビンは血液という溶媒の中にあるたんぱく質です。その構造は、酸素を効率的に運べるよう、酸素と結合しやすくなっています。しかし、溶液を血液から別なものに置き換えたり、温度を上げたりすると、機能が減少したり無くなったりします。私たちの研究室では、このようにさまざまな環境におけるたんぱく質の構造・性質や機能の関係について調査しています。これが解明できれば、より安定性や活性の高い、新しい機能を持ったたんぱく質を作り出すカギとなり、医療分野や産業に利用できます。

佐賀 佳央 教授(生物化学研究室)

光と生命のかかわりを理解し、ナノテクノロジーへ応用する。

目で物を見るという行為や、植物の光合成など、光がかかわる生命現象は、我々にとって身近なところで起こっています。これらは、たんぱく質と生体色素分子がうまく組み合わさることで機能します。私たちは、このような光がかかわる生命現象のメカニズムを分子レベルで解明することを目指した研究を行っています。これらの研究は生命科学の進歩への貢献や、人類が直面するエネルギー問題・環境問題を解決するナノマテリアル開発への応用が期待できます。

杉本 邦久 教授(無機化学研究室)

放射光によって機能性材料を可視化する!

物質・材料の物理的性質や機能を支配しているのは、原子・分子、その集合体の構造と電子の振る舞いです。放射光を用いた原子レベルの精密な構造解析を実現することにより、ガスの吸蔵、磁性、伝導性などの機能性材料が持っている物理的な性質の起源を直接的に観察することができます。可視化することによって得られた情報は、新たな機能性材料を開発するために活用されています。

山際 由朗 准教授(有機化学研究室)

次に作られる化合物は、人類を救う特効薬かもしれない。

日頃使用する医薬品の多くは薬草などの成分(天然物)そのものか、それらから誘導された化合物です。現在も癌やエイズなどの特効薬を求めて、世界中 で薬用成分の探索が行われています。自然界からは微量しか得られない成分を人工的に合成することで、様々な薬理作用を調べることが可能になり、自然界には 存在しない新たな治療薬の発見につながるかもしれません。本研究室では、HIVやインフルエンザウィルスの感染・増殖を阻害する化合物や、老化や癌に関係 して注目されているラジカル(活性酸素)を分解する化合物の合成方法を開発しています。

森澤 勇介 准教授(分光物性化学研究室)

人が便利に使える新しい“目”を開発する。

目は外部から入ってくる可視光線を感じる器官です。視覚が多彩な情報を含むというのは、その可視光が光のエネルギーによって赤・緑・青と分けて感じることができるからです。私テーマである分光は、このように違ったエネルギーの光を分けて検知し(その分布をスペクトルといいます。)、そこから得られる分子や原子の情報を最大限引き出す研究です。可視光よりも高いエネルギーの紫外線領域のスペクトルには物質の中の電子の運動を反映した情報があり、また極端に長い波長のスペクトルには原子の集団運動の情報があります。これらの情報をスペクトルから取り出し、今まで人の目では見えなかったものを見えるようにするための研究を行っています。

松本 浩一 准教授(有機合成化学研究室)

有機活性種の制御を基軸とした新規有機反応の開発

環境に優しい電極反応を用いて、有機分子の酸化・還元を行うことで活性な有機化学種を発生させ、これを利用した新しい有機反応の開発に挑戦しています。ルイス酸を用いての複雑な骨格を構築する環化反応や、有機薄膜太陽電池への利用を目的とする有機電子材料の合成にも取り組んでいます。また最近では、有機活性種化学とラマン分光法を融合した観測システムの構築などの共同研究にも取り組んでいます。基礎研究を重視した有機合成化学を展開しています。

鈴木 晴 准教授(凝縮系物理化学研究室)

集団のふるまいの本質を分子集合体の中に見出す

人は集団になると、一人ではとてもやらないような行動を起こすことがあります。「集団ならではのふるまい」の本質はどこにあるのでしょうか?集団になると挙動が変わるのは、人間などの生き物に限った話ではなく、原子や分子などにおいてもよく観測される現象です。例えば、固体⇔液体⇔気体といった状態変化はその典型例であり、融点や沸点という特定の温度を境界にして、原子や分子の運動や距離が劇的に変化します。このような集団的なふるまいの基本ルールとして熱力学法則があります。私たちのグループでは、原子や分子の集団挙動を熱力学的な視点から丁寧に調べていくことで、集団現象の本質を見出そうと研究を進めています。

兵藤 憲吾 講師(有機反応化学研究室)

自然界の反応を参考にした環境にやさしい医薬品合成法の開発

有機反応には、入手の容易さや経済的な理由で、時として環境に有害な試薬を使用し、その反応後に残った未反応試薬は、無害化するために適切な処理を必要とし、自然界へ排出しないようにケアしなければなりません。一方で、酵素反応の中には、持続可能な方法で有機物質を生産し、自然界でうまく循環している例もあります。私たちは、そのような酵素反応を参考にすることで、危険で取り扱いにくい試薬の代替となる試薬や新たな合成手法の開発を行い、医薬品合成などにも展開可能な有機合成技法の創出を目指しています。

河野 七瀬 講師(分析化学研究室)

分析化学をツールとした大気反応メカニズムの解明

大気中には数多くの種類の化学成分が存在し、様々な化学反応が起きています。その中には、気体の反応だけでなく、大気中の微小粒子であるエアロゾルの表面や内部で起こる反応もあり、これらが大気質に影響を与えている事が示唆されてきました。我々の研究室では、大気中の主要な反応物質であるラジカルに焦点を当て、ラジカルの気相反応や、粒子との不均一反応メカニズムを解明することを目的に実験を行っています。特に、HOxラジカルと呼ばれる過酸化ラジカルは、植物や人間活動から放出される揮発性の有機化合物と反応することで、オゾンを主成分とする光化学オキシダントの生成に関与するなど、大気環境問題の解決にも繋がる重要なテーマです。