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メカノケミカル反応で機能性水素材料を開発
2025.07.11
- リリース
【ニュースリリース】
メカノケミカル反応で機能性水素材料を開発 -水素含有量増大と格子ひずみ導入で触媒活性を大幅に向上-
近畿大学理工学部理学科化学コース講師 竹入史隆、理化学研究所(理研)開拓研究所 主任研究員 小林玄器、東京科学大学総合研究院元素戦略MDX研究センター 教授 北野政明、量子科学技術研究開発機構 グループリーダー 大和田謙二、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所 教授(茨城大学学術研究院応用理工学野教授) 森一広らの共同研究グループは、メカノケミカル反応[1]を用いることで、負の電荷を持つ水素"ヒドリド(H-)[2]"を多量に含む遷移金属酸水素化物[3]を開発し、触媒活性の大幅な向上に成功しました。
この結果は合成・機能・解析のいずれの観点からも興味深く、H-を含む機能性材料の新たな開発指針となる成果といえます。
本研究は、科学雑誌『Journal of the American Chemical Society』のオンライン版(7月1日付)に掲載されました。
【補足説明】
[1]メカノケミカル反応
硬質容器に硬質ボールと粉末試料を入れ、容器を高速回転させることで反応させる合成方法。試料が容器やボールと衝突した際に発生する機械的エネルギーが反応の駆動力となる。
[2]ヒドリド(H-)
水素原子が電子を一つ受け取り、アニオン(陰イオン)となった状態。ヘリウムと同じ電子配置を取り1s軌道内を二つの電子が占有する。むき出しの原子核が点電荷として振る舞うH+と比較してH-のイオン半径は大きく、多くの化合物中では酸化物イオン(O2-)と同程度の大きさとなる。
[3]酸水素化物
セラミックスの代表例である酸化物における酸化物イオン(O2-)の一部をヒドリド(H-)で置換した化合物。複数のアニオン種から構成される無機固体化合物である「複合アニオン化合物」の一種