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C60フラーレンに閉じ込めたリチウムイオンの運動状態を解明!
2025.08.22
- リリース
【ニュースリリース】
C60フラーレンに閉じ込めたリチウムイオンの運動状態を解明!
近畿大学理工学部理学科化学コース准教授 鈴木晴、名古屋市立大学教授 青柳忍、モスクワ物理工科大学教授 ボリス ゴルシュノブ、大阪大学大学院理学研究科教授 中野元裕らの研究グループは、サッカーボール型の炭素分子C60フラーレンに閉じ込めた1個のリチウムイオンの運動状態を、テラヘルツ波から赤外線までの広帯域な吸収分光と、理論的な計算により詳細に明らかにしました。今回明らかになったC60内のイオンの運動を利用することで、分子サイズのスイッチや素子などに応用できる可能性があります。またイオンの運動による電磁波吸収は、高分解能なイメージングやセンサー、暗号技術などに応用できる可能性があります。
【用語解説】
C60フラーレン:
60個の炭素原子で構成されたサッカーボール型の中空球状分子で、1985年にハロルド クロトー 氏らによって発見されました(1996年ノーベル化学賞受賞)。C60は高い電子受容特性を有することから、太陽電池材料などへの応用が進められています。C82などの炭素数の異なるフラーレンも存在し、中空の分子内部に原子や分子を内包したフラーレンは内包フラーレンと呼ばれます。リチウムイオンを内包したC60(Li+@C60)は、2010年に日本の企業(イデア・インターナショナル株式会社 https://www.lic60.info/)によって大量合成法が確立され、現在市販されています。
吸収分光:
試料に特定の波長の電磁波を照射したときの電磁波の吸収量(透過係数や吸光度)を、波長(または波数、振動数)の関数として測定する実験手法です。試料中の原子・分子の物理・化学的状態を分析するのに用いられます。測定に用いる電磁波の波長領域によって得られる情報は大きく異なり、テラヘルツ波(波長 1~0.1mm程度)や赤外線(波長 0.1~0.001mm程度)は、原子や分子の運動状態を調べるのに適しています。